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レーシングスキー 第四話

<前回までのあらすじ>
僕は高校の時、スキー部に入部する。かねてから志望していたアルペンへの配属も決定し、僕は意気込んでいた。そして遂にスキー部の合宿が始まった。


街がクリスマスムードに包まれた12月の下旬。学生達は期末テストを終え、誰もが心を躍らせる冬休み。そんな冬休みを返上して、僕らスキー部の合宿が始まった。JR大阪駅の噴水広場(現在は無い)に、夜行列車で新潟へ向かうので、夜9時頃の集合だった。できるだけ荷物を軽くするため、服装はジャージ&スキーウェアだ。1年生、そして2年生、そして顧問やOBの人達が集合した。スキー部に3年生はいない。大学受験が控えているため、3年生になると同時に引退になるからである。全員が集合して、円陣を組みJR大阪駅の人通りの多い場所で、大きな声で掛け声をあげる姿はまるで応援団の様だった。そして新潟へと向かう夜行列車に乗った。

朝方、新潟に到着した。僕らの最初の合宿の基盤となる場所は「ロッジ 雪達磨」だ。いかにも木で出来た、丸太小屋にも近い雰囲気のロッジは、どことなく優しい景観を漂わせていた。移動の疲れもあるので仮眠をとって、練習は午後からだ。僕は、はやる気持ちを抑えて眠りについた。

ゲレンデに着いた時は小降りの雪で、それほど寒くもなくスキーをするには良い天候だった。僕ら1年生達は緊張していた。少なくとも僕は。なんせ久しぶりなうえに、ノルディックを蹴って、アルペン志望した僕は、何としても先輩や同期生に、良いところをみせなければならないと思っていたからだ。そしてリフトでゲレンデの上に到着した。そしてキャプテンが集合をかけた。

キャプテン「今日は体をならすため、とりあえず滑ってくれ。そして2時間後には、1年生は俺の前で滑ってもらう。テストや。」

その一言で、さらに緊張してしまった僕は、心臓の鼓動を押さえる事ができなかった。そしてキャプテンが滑り出した。僕は唖然とした。今まで見た事も無い。そう思える程、キャプテンの滑りは上手かった。続いて先輩達が滑り始める。これまた上手い。そして1年生の女子が滑り出した。もう呆然である。女とは思えない程、ダイナミックかつスムーズに滑降していく1年生女子。みんな相当上手い。そして1年男子が滑り出す。2人とも、2年生や1年女子に比べると劣る部分もあったが、僕に比べれば、やはり上手かった。僕だけ初心者である。良いところを見せるどころではない。どうやって初心者ではないかを隠す方向にシフトチェンジした。と同時に「みんなそんなに上手くないんちゃうの?」と思っていた自分を恥じた。そして緊張のテストの時間がやってきた。

キャプテンは下で見ている。1年生は合図とともに1人ずつ滑っていく。女子達は本当に上手い。これならインターハイにも出れる。それほど上級者に思えた。続いて男子が滑る。僕の番だ。緊張のあまり体が思うように動かない。もともとヘタなうえに何度も転びながら下へと滑っていった。穴があったら入りたい気持ちになっている僕を見て、キャプテンは僕にこう言った。

キャプテン「百田。やる気はあるな?」
留衣   「あ、あります!」
キャプテン「よし。頑張れよ。」

意外な言葉だった。絶対、ダメ出しされると思っていたからだ。キャプテンは僕が下手な事を承知でアルペンにしてくれた。「どれだけ成長するかはお前次第や」そう言われている気がした。キャプテンの優しさを感じながらも、僕は自分が情けなくて仕方なかった。そして、その日の練習を終えた。ロッジに戻るとノルディックチームがいて、そこにMの姿があった。

留衣「どうやった?ノルディック?」
M 「しんどいけど(笑)、めっちゃ面白かったわ。アルペンはどうやった?」
留衣「みんな、めっっっちゃ上手い。キャプテンとか凄いで。プロやで。」
M 「マジでぇ?よかったー、ノルディックにして(笑)」

冗談半分でMが言った一言が、僕を打ちのめした。僕はスキー部に入部して、人生始めて屈辱というものを実感していた。自分一人だけ初心者で、みんなの足を引っ張る事になるであろう。その事が無性に腹立たしく思えた。そして合宿も終盤に差し掛かろうとしている時に、「世の中そんなに甘くない」という現実が僕に差し迫ろうとしていた。


つづく


  1. 2005/10/19(水) 02:09:53|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:6
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コメント

あぁぁ~~~。
続きがめっちゃ気になります><;;;
いつもながら留衣くんの文章は上手いですねぇ。
まるで自分も雪山にいるよぉな気持ちになってドキドキしながら読んでます(笑)。
何話まで続くのかな?
最後はハッピーエンドだと良いなぁ…。
  1. 2005/10/19(水) 02:20:40 |
  2. URL |
  3. あゆり #VEIOABK.
  4. [ 編集]

だぁー!!

ホントに「つづく」になったんですね。。。
しかも「続々々」とくるかと思いきや「第四話」。。。
先は長そうだけど、こうなると次の更新が楽しみだぁ~
  1. 2005/10/19(水) 02:42:27 |
  2. URL |
  3. again #R9srEaqY
  4. [ 編集]

思わず

頑張って!!
って言いたくなるほど読んでるし素直な気持ちが綴られてて.何かよいです。引き込まれます。

私も文.上手いなと思ってました。(オルコラムとはちょと違う?)失礼m(_ _)m
続き待ってます!!
  1. 2005/10/19(水) 06:36:17 |
  2. URL |
  3. 魅夜 #MAUeFodI
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ドキドキ

はじめて書き込みしますe-68
いやぁいやぁドキドキしてます。ほんとに文章書くの上手ですね・・・
もう引き込まれっぱなしですよ。。。
つづきがかなり気になります!!
あと何回続きを待てばいいのでしょうううう。
高校生のころのこういった部活動の思い出は一生の宝物ですよね。私も高校の頃演劇部に所属していました。廃部しかけた部活でほんとに大変でした。でも、今の私がいるのもそのときのつらさを乗り切ったからだと思います。かなりいい思い出ですよね。
毎日更新されたかチェックします!!!楽しみだぁ~v-238
  1. 2005/10/19(水) 10:52:13 |
  2. URL |
  3. たま #-
  4. [ 編集]

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  1. 2005/10/19(水) 21:50:05 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

雪達磨か。

私も続続々って来るかと思っていました!ここに来て第四話。
作者の留衣さんにもこんなに続くなんて予想外だったのかな?!(笑)
今回はどうしても主人公に感情移入して読んでしまいました。
だから、冗談半分で言ったMの言葉。わかっているんだけどムカついちゃった…。
もう第五話更新されてましたね。これから読みます!
  1. 2005/10/20(木) 01:28:19 |
  2. URL |
  3. トミィ #-
  4. [ 編集]

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